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WCAG 2.2とは?2.1との違いや達成基準を日本語でわかりやすく解説

WCAG2.2とは、W3Cが勧告するウェブアクセシビリティに関する最新のガイドラインです。
このバージョンでは、WCAG2.1からさらに9つの達成基準が追加され、1つが廃止されました。
本記事では、このWCAG2.2で何が変わったのか、追加された達成基準の内容とは何かを、公式の理解文書も踏まえながら日本語でわかりやすく解説します。

ウェブサイトの向上を目指す上で重要な指針となります。

WCAG 2.2の基本概要|W3Cが勧告した最新のアクセシビリティ基準

WCAG2.2は、Web技術の標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)が2023年10月5日に正式に勧告した、ウェブコンテンツのアクセシビリティに関する国際的なガイドラインの最新版です。
高齢者や障害を持つ人々を含む、誰もがウェブコンテンツを利用しやすくすることを目的としています。
原文に加え、W3Cが公開する詳細な解説書も存在し、具体的な実装方法を理解する上で役立ちます。

WCAG 2.1からWCAG 2.2への主な変更点

WCAG2.1とWCAG2.2の最も大きな違いは、9つの新しい達成基準が追加され、1つの達成基準(4.1.1構文解析)が廃止された点です。
WCAG2.2はWCAG2.1に対して後方互換性があり、WCAG2.1の要件はすべて含まれています。

そのため、WCAG2.1に準拠しているウェブサイトは、その部分についてはWCAG2.2にも準拠していることになります。
主な変更は、認知・学習障害、運動障害を持つユーザーや、モバイル端末での利用をより円滑にすることに焦点が当てられています。

【レベル別】WCAG 2.2で新しく追加された9つの達成基準

WCAG2.2では、適合レベルA、AA、AAAに合わせて9つの達成基準が新たに追加されました。
レベルAが最も基本的な要件、AAが多くのウェブサイトで推奨されるレベル、AAAが最も高度な要件を示します。
これらの基準は、フォーカスの可視性、ドラッグ操作の代替手段、ターゲットサイズ、認証プロセスの簡略化など、より多様なユーザーのニーズに応えることを目的としています。

これにより、特にモバイルユーザーや認知・運動機能に制約のあるユーザーの操作性が向上します。

2.4.11 隠されないフォーカス (最低限) (レベルAA)

この達成基準は、キーボード操作でフォーカスした項目が、他のコンテンツによって完全に隠れてしまう状態を防ぐことを要求します。
例えば、画面上部に固定されたヘッダーや、下部に表示されるクッキーバナー、チャットウィジェットなどがスクロールした際に、フォーカス中のリンクやボタンを覆い隠してしまうケースが該当します。

フォーカスインジケーターが少なくとも一部分は見える状態を維持することで、キーボード利用者は現在位置を確実に見失わずに操作を継続できます。
この基準は、関連する達成基準1.4.11や以前の4.11とは異なる新しい要件です。

2.4.12 隠されないフォーカス (高度) (レベルAAA)

この達成基準は、レベルAAの「2.4.11フォーカスは隠されない(最低限)」よりも厳格な要件を定めています。
レベルAAではフォーカスインジケーターが一部分でも見えていれば許容されましたが、このレベルAAAの基準では、フォーカスを受け取ったUIコンポーネントがいかなる時点でも他のコンテンツによって一切隠されないことが要求されます。
つまり、コンポーネントの全体が常に表示されている必要があります。

これにより、キーボード利用者はフォーカスの位置を完全に見失うことなく、より確実に操作を続けられます。

2.4.13 フォーカスの外観 (レベルAAA)

キーボードフォーカスのインジケーターが十分に視認可能であることを保証するための、具体的な要件を定めた達成基準です。
この基準を満たすには、フォーカスインジケーターが最低でも2pxピクセル以上の太さでコンポーネントを囲む、または背景と3:1以上のコントラスト比を持つ領域であることなどが求められます。

弱視のユーザーや、明るい環境で画面を見るユーザーが、どこにフォーカスが当たっているかを明確に識別できるようにすることが目的です。
この要件は、より高度なアクセシビリティを目指すサイトで重要になります。

2.5.7 ドラッグ動作 (レベルAA)

ドラッグ&ドロップのような、ポインターを特定の経路に沿って動かす操作に依存する機能に対して、代替手段を提供することを求める達成基準です。
例えば、スライダーの値を変更する操作や、リストの項目を並べ替える操作を、ドラッグだけでなくボタンのクリックやテキスト入力でも行えるようにします。
これにより、マウスの精密な操作が困難なユーザーでも、同等の機能を達成できます。

具体的な実装方法は、W3Cが提供するtechniquesで示されており、シングルポインターによる操作で完結する代替手段を用意することが求められます。

2.5.8 ターゲットのサイズ (最低限) (レベルAA)

クリックやタップの対象となるターゲットのサイズについて、最低限の大きさを確保することを要求する達成基準です。
具体的には、ターゲットの領域が少なくとも24×24pxであることが求められます。
ただし、ターゲットが文中に含まれる場合や、ブラウザが提供する標準的なUIコンポーネントはこの限りではありません。

この2.5.8の要件を満たすことで、手の震えがあるユーザーや、指で操作するモバイル端末の利用者が、誤って隣接する要素をタップしてしまうことを減らし、操作性を向上させます。

3.2.6 一貫したヘルプ (レベルA)

ウェブサイト内の複数のページにわたって、ヘルプ機能へのアクセス方法を一貫させることを求める達成基準です。
ヘルプ機能には、電話番号、メールアドレス、FAQページへのリンク、チャットボットなどが含まれます。
これらのヘルプ情報が各ページに存在する場合、それらを常に同じ相対的な順序で配置する必要があります。

これにより、ユーザーはサイト内のどこにいても、必要な時に迷わずサポート情報を見つけ出せます。
関連する3.2や3.2.1の原則に基づき、予測可能なインターフェースを提供することが目的です。

3.3.7 冗長な入力項目 (レベルA)

一度ユーザーが入力した情報を、同じプロセス内で再度入力させないようにすることを要求する達成基準です。
例えば、配送先住所と請求先住所が同じ場合に、チェックボックス一つで入力情報をコピーできる機能や、以前の入力内容を自動でフォームに埋める機能が該当します。
ユーザーが情報を再入力する必要がある場合でも、その情報が選択可能になっている必要があります。

この3.3の基準は、特に記憶に困難があるユーザーの認知的な負担を軽減し、入力ミスを防ぎます。
関連基準3.3.2も入力エラーの防止を目的としています。

3.3.8 アクセシブルな認証 (最低限) (レベルAA)

ログインなどの認証プロセスにおいて、ユーザーに認知機能テストを課さないことを求める達成基準です。
認知機能テストには、文字の記憶や書き写し、パズル、計算などが含まれます。
これらのテストは、認知障害のあるユーザーにとって大きな障壁となる可能性があります。

代替手段として、パスワードマネージャーからパスワードをコピー&ペーストできる機能や、メールで受信したリンクをクリックするだけの認証方法を提供することが求められます。
この基準は、コンテンツを知覚可能にする原則1.3にも関連します。

3.3.9 アクセシブルな認証 (高度) (レベルAAA)

この達成基準は、レベルAAの「3.3.8アクセシブルな認証(最低限)」の要件に加え、認証プロセスでユーザー名とパスワードの記憶を要求しないことを求めています。
つまり、ユーザーがパスワードマネージャーなどの支援技術を利用して、ユーザー名やパスワードをコピー&ペーストしたり、自動入力したりするのを妨げてはいけません。

ペースト操作を無効にするなどの実装は、この基準に違反します。
この要件は、関連する4.1.3の達成基準とは直接関係ありませんが、支援技術との互換性を確保する上で重要です。

WCAG 2.2で廃止された唯一の達成基準「4.1.1 構文解析」

WCAG2.2では、達成基準「4.1.1構文解析」が廃止されました。
この基準は、HTMLなどのマークアップ言語の構文が仕様に準拠しており、支援技術が正しく解釈できるようにすることを目的としていました。
廃止の背景には、近年のブラウザや支援技術の性能向上があります。

これらの技術は、多少の構文エラーであれば自動的に解釈・修正できるようになったため、この基準がアクセシビリティの障壁となるケースが少なくなりました。
ただし、これはHTMLの仕様を無視してよいという意味ではなく、堅牢なウェブサイトを構築する上で、引き続き適切な構文での記述が推奨されます。
この基準は原則4.1に属していました。

改正障害者差別解消法やJIS規格との関連性

WCAG2.2は国際的なガイドラインであり、日本の法規制やJIS規格とも密接に関連しています。
2024年4月に施行された改正障害者差別解消法では、事業者による合理的配慮の提供が義務化され、ウェブアクセシビリティの確保はその重要な一環と位置づけられています。
また、米国のADAやEUのアクセシビリティ指令など、各国の法制度もWCAGを基準として参照しています。

WCAG2.2はISO規格としても承認されており、その国際的な標準としての地位を確立しています。

WCAG 2.2への対応は改正障害者差別解消法における合理的配慮になるか?

ウェブサイトをWCAG2.2に準拠させる対応は、改正障害者差別解消法が求める「合理的配慮の提供」を実践する上で、非常に有効な手段です。
法律は特定の技術基準を直接定めてはいませんが、ウェブアクセシビリティを確保することは、障害のある人が情報へアクセスし、サービスを利用するための「環境の整備」に他なりません。
WCAG2.2の達成基準を満たすことは、多様なユーザーが直面する障壁を取り除く具体的な取り組みとなり、事業者が提供義務を負う合理的配慮の内容として高く評価されると考えられます。

日本の規格「JIS X 8341-3」の今後の改定への影響

日本の公的なウェブアクセシビリティ規格である「JIS X 8341-3」は、これまでWCAGのバージョンアップを追って改定されてきました。
現行の「JIS X 8341-3:2016」は、WCAG 2.0に基づいています。
WCAG 2.1およびWCAG 2.2が勧告されたことを受け、JIS X 8341-3も将来的にはこれらの新しい達成基準を取り込む形で改定される可能性が高いです。

具体的な改定時期は未定ですが、公的機関のウェブサイト調達要件などにも影響するため、今後の動向を注視する必要があります。

Webサイト制作でWCAG 2.2に対応するための実践チェックリスト

Webサイト制作においてWCAG2.2に対応するには、各担当者がそれぞれの役割に応じて達成基準を理解し、実践することが重要です。
W3Cが提供しているHow to Meet WCAG(QuickReference)、通称quickrefは、達成基準、達成方法、失敗例をフィルタリングして確認できるため、具体的な対応策を検討する際に非常に役立ちます。

このツールを活用しながら、企画、デザイン、実装の各フェーズでアクセシビリティを確保するためのチェックリストを設けることが効果的です。

デザイナーが注意すべきターゲットサイズやコントラストの確認方法

デザイナーは、視覚的な要素のアクセシビリティを確保する上で重要な役割を担います。
WCAG2.2では特に、ボタンやリンクのターゲットサイズを最低24×24px以上にする(2.5.8)ことが求められます。
また、テキストと背景のコントラスト比は、レベルAAで4.5:1以上(1.4.3)、レベルAAAで7:1以上(1.4.6)を確保する必要があります。

これらのコントラスト要件は、デザインツールのプラグインやオンラインのコントラストチェッカーで確認できます。
加えて、画面を400%に拡大しても情報が欠けたり横スクロールが発生したりしないリフロー(1.4.10)への配慮もデザイン段階から不可欠です。

エンジニアが実装時に気を付けたいフォーカス制御のポイント

エンジニアは、特にキーボード操作のアクセシビリティを担保する上で中心的な役割を果たします。
WCAG2.2で追加されたフォーカス関連の基準を満たすため、フォーカスインジケーターが常に表示され、他の要素に隠れないように実装することが重要です。
また、基本的なアクセシビリティ要件として、画像に適切な代替テキストを提供する、HTMLをセマンティックに記述し情報と構造をプログラムが解釈できるようにする、カスタムコンポーネントにはARIAを用いて名前・役割・値を正しく設定するといった点が挙げられます。

ディレクター・企画担当者が押さえるべき認証やヘルプ機能の要件

ディレクターや企画担当者は、サイト全体の機能要件を定義する段階でアクセシビリティを組み込む必要があります。
WCAG2.2では、認知機能テストを必要としないアクセシブルな認証の導入や、サイト内で一貫した場所にヘルプ機能を設置することが求められます。

その他、時間制限のあるコンテンツはユーザーが調整可能にする、自動で動くコンテンツは停止できる手段を提供する、ページの主題がわかるタイトルを付ける、コンテンツの言語を正しく設定するといった要件を企画段階で盛り込むことが不可欠です。

WCAG 2.2に関するよくある質問

ここでは、WCAG2.2に関して頻繁に寄せられる質問とその回答をまとめます。
WCAG2.1からの変更点や、法的な対応義務の有無、準拠の考え方など、実務担当者が抱きやすい疑問点を解消します。

WCAG 2.2に今すぐ対応する必要はありますか?

法的にWCAG2.2への準拠が直接義務付けられているわけではありません。
しかし、改正障害者差別解消法が求める合理的配慮の一環として、また、より多くのユーザーが利用しやすいサイトを構築するために、可能な限り早期の対応が推奨されます。

特に新規サイト制作や大規模なリニューアルの際は、WCAG2.2を基準とすることが望ましいです。

WCAG 2.2の信頼できる日本語訳はどこで確認できますか?

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)が公開している公式の日本語訳が最も信頼性の高い情報源です。
WAICはW3Cの翻訳協力組織であり、原文の意図を正確に反映した翻訳を提供しています。
公式サイトでは原文と日本語訳を並べて確認できるため、達成基準1.4.1などの詳細なニュアンスを理解する上で非常に有用です。

すべての達成基準を満たさないと「準拠」とは言えませんか?

はい、「準拠」と表明するためには、目標とする適合レベル(A、AA、AAA)の達成基準をすべて満たす必要があります。
一部の基準のみを満たしている場合は「準拠」とは言えず、「一部準拠」や「適合に向けて取り組み中」といった表現が適切です。

適合レベルを選択し、そのレベルに含まれる全ての要件をクリアすることが、準拠の条件となります。

まずは現状チェックから。無料アクセシビリティチェックツールのご紹介

自社のウェブサイトが現在どの程度アクセシビリティに対応できているかを知ることは、改善への第一歩です。株式会社テックミーブレインズが提供する「Accessdove(アクセスダブ)」は、専門知識がなくても手軽にアクセシビリティ向上やウェブサイトの状況を把握できる便利なツールです。

このツールは無料トライアルが用意されており、会員登録を行うだけで誰でも無料でアクセシビリティのチェック機能を利用できます。対象のウェブサイトに具体的にどの箇所に課題があるのかをクラウド上で即座に確認できるのが大きな特徴です。
WCAG 2.2という最新基準への対応を検討する際、まずは現状の課題を可視化することが欠かせません。ツールを活用して、サイトに潜むアクセシビリティの障壁を特定することから始めてみてください。

まとめ

WCAG2.2は、9つの達成基準を追加し、1つの基準を廃止したウェブアクセシビリティの最新ガイドラインです。
この改定は、特にモバイル端末の利用者や認知・運動機能に制約のあるユーザーの体験向上に焦点を当てています。
WCAG2.1との後方互換性は保たれており、今後のウェブ制作ではこの新しい基準を理解し、実践していくことが求められます。

代替テキストなどの基本的な要件に加え、新しい達成基準への対応がアクセシビリティ向上につながります。