ウェブアクセシビリティの「A」「AA」達成基準を詳しく解説!
ウェブアクセシビリティの達成基準には、A・AA・AAAの3つがあります。どの達成基準を選択するかは企業の任意ですが、一般的にAAが推奨されています。ウェブアクセシビリティ対応では、達成基準の内容を把握して、どのレベルを目指すのかの決定が重要です。
この記事では、ウェブアクセシビリティにおける規格の種類や達成基準の種類と項目、JIS・WCAGの具体的な項目・達成基準について詳しく解説します。ウェブアクセシビリティの達成基準を知りたい方は、ぜひご覧ください。
ウェブアクセシビリティにおける規格の種類
ウェブアクセシビリティへの配慮を行うにあたり、障がい者や高齢者などの課題・ニーズを各企業が独自に調査するのは簡単ではないため、特定の組織・団体が規格を定めています。主な規格は以下の2種類です。
- WCAG
Web Content Accessibility Guidelinesの略で、W3C(World Wide Web Consortium)が制定した規格です。W3Cとは、Webサイトにおける各種技術の標準化や相互運用性の確保を推進する目的で設立された標準化団体のことを指します。2024年11月現在の最新バージョンはWCAG 2.2です。 - JIS X 8341-3
一般財団法人日本規格協会(JSA)がWCAGをベースに制定した国内規格です。日本国内で活動する多くの企業や組織が、JIS X 8341-3を利用したウェブアクセシビリティ対応を行っています。なお、2024年11月現在の最新バージョンはJIS X 8341-3:2016です。
ウェブアクセシビリティ対応を行う際には、まず規格の内容を理解しましょう。
規格の詳細は以下をご覧ください。
⇒ウェブアクセシビリティのJIS規格について徹底解説!
ウェブアクセシビリティの達成基準A・AA・AAAと項目
ウェブアクセシビリティに関する規格では、達成基準と達成する要件が存在します。ここからは、達成基準と項目の概要について詳しく解説します。
達成基準A・AA・AAAとは
WCAGとJIS X 8341-3では、以下の達成基準が設けられています。
- A:多くのユーザーがサイト利用をするために、最優先で対応すべき最低限の基準
- AA:多くのユーザーがサイト利用をするための標準的な基準
- AAA:ほぼ全ての人がサイトを利用できる最高の基準
基本的にAAへの対応が推奨されています。また、上記基準に対してどの程度適合するかを以下の3つから選択します。
- 準拠:達成基準を全て満たしている
- 一部準拠:達成基準を一部を満たしている
- 配慮:適合レベルに該当するかの試験実施の有無、試験結果は問わない
項目
規格には大きく以下の4項目が存在します。
- 知覚可能:ユーザーがコンテンツを知覚可能にするための原則です。テキストや画像、音声などの情報を、複数の手段にて提供することが求められます。
- 操作可能:ユーザーがインタラクティブな操作を可能にするための原則です。キーボードだけで操作できる環境などが求められます。
- 理解可能:全ての人がコンテンツ内容やインターフェースを、理解できるようにするための項目です。複雑な操作や専門用語などの使用を避けた、直感的で理解しやすい設計が求められます。
- 堅牢:さまざまな技術やデバイスで、Webサイトが堅牢に動作するための項目です。現在や将来登場する可能性があるツール・ブラウザで利用可能なコードを活用した設計が求められます。
各項目に対して、複数の要素が盛り込まれています。
JIS X 8341-3:2016の具体的な項目と達成基準
続いて、みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)を参考に、JIS X 8341-3:2016の具体的な項目と達成基準について詳しく解説します。
知覚可能
知覚可能における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
1.1 | 非テキストコンテンツ | ー |
1.1.1 | 非テキストコンテンツの達成基準 | A |
1.2 | 時間依存メディア | ー |
1.2.1 | 音声だけ及び映像だけ(収録済み)の達成基準 | A |
1.2.2 | キャプション(収録済み)の達成基準 | A |
1.2.3 | 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準 | A |
1.2.4 | キャプション(ライブ)の達成基準 | AA |
1.2.5 | 音声解説(収録済み)の達成基準 | AA |
1.2.6 | 手話(収録済み)の達成基準 | AAA |
1.2.7 | 拡張音声解説(収録済み)の達成基準 | AAA |
1.2.8 | メディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準 | AAA |
1.2.9 | 音声だけ(ライブ)の達成基準 | AAA |
1.3 | 適応可能 | ー |
1.3.1 | 情報及び関係性の達成基準 | A |
1.3.2 | 意味のある順序の達成基準 | A |
1.3.3 | 感覚的な特徴の達成基準 | A |
1.4 | 判別可能 | ー |
1.4.1 | 色の使用の達成基準 | A |
1.4.2 | 音声の制御の達成基準 | A |
1.4.3 | コントラスト(最低限レベル)の達成基準 | AA |
1.4.4 | テキストのサイズ変更の達成基準 | AA |
1.4.5 | 文字画像の達成基準 | AA |
1.4.6 | コントラスト(高度レベル)の達成基準 | AAA |
1.4.7 | 小さな背景音,又は背景音なしの達成基準 | AAA |
1.4.8 | 視覚的提示の達成基準 | AAA |
1.4.9 | 文字画像(例外なし)の達成基準 | AAA |
引用:みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)|総務省
操作可能
操作可能における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
2.1 | キーボード操作可能 | ー |
2.1.1 | キーボードの達成基準 | A |
2.1.2 | キーボードトラップなしの達成基準 | A |
2.1.3 | キーボード(例外なし)の達成基準 | AAA |
2.2 | 十分な時間 | ー |
2.2.1 | タイミング調整可能の達成基準 | A |
2.2.2 | 一時停止,停止及び非表示の達成基準 | A |
2.2.3 | タイミング非依存の達成基準 | AAA |
2.2.4 | 割込みの達成基準 | AAA |
2.2.5 | 再認証の達成基準 | AAA |
2.3 | 発作の防止 | ー |
2.3.1 | 3 回のせん(閃)光,又はしきい(閾)値以下の達成基準 | A |
2.3.2 | 3回のせん(閃)光の達成基準 | AAA |
2.4 | ナビゲーション可能 | ー |
2.4.1 | ブロックスキップの達成基準 | A |
2.4.2 | ページタイトルの達成基準 | A |
2.4.3 | フォーカス順序の達成基準 | A |
2.4.4 | リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準 | A |
2.4.5 | 複数の手段の達成基準 | AA |
2.4.6 | 見出し及びラベルの達成基準 | AA |
2.4.7 | フォーカスの可視化の達成基準 | AA |
2.4.8 | 現在位置の達成基準 | AAA |
2.4.9 | リンクの目的(リンクだけ)の達成基準 | AAA |
2.4.10 | セクション見出しの達成基準 | AAA |
引用:みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)|総務省
理解可能
理解可能における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
3.1 | 読みやすさ | ー |
3.1.1 | ページの言語の達成基準 | A |
3.1.2 | 一部分の言語の達成基準 | AA |
3.1.3 | 一般的ではない用語の達成基準 | AAA |
3.1.4 | 略語の達成基準 | AAA |
3.1.5 | 読解レベルの達成基準 | AAA |
3.1.6 | 発音の達成基準 | AAA |
3.2 | 予測可能 | ー |
3.2.1 | フォーカス時の達成基準 | A |
3.2.2 | 入力時の達成基準 | A |
3.2.3 | 一貫したナビゲーションの達成基準 | AA |
3.2.4 | 一貫した識別性の達成基準 | AA |
3.2.5 | 要求による変化の達成基準 | AAA |
3.3 | 入力支援 | ー |
3.3.1 | エラーの特定の達成基準 | A |
3.3.2 | ラベル又は説明の達成基準 | A |
3.3.3 | エラー修正の提案の達成基準 | AA |
3.3.4 | エラー回避(法的,金融及びデータ)の達成基準 | AA |
3.3.5 | ヘルプの達成基準 | AAA |
3.3.6 | エラー回避(全て)の達成基準 | AAA |
引用:みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)|総務省
堅牢
堅牢における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
4.1 | 互換性 | ー |
4.1.1 | 構文解析の達成基準 | A |
4.1.2 | 名前(name),役割(role)及び値(value)の達成基準 | A |
引用:みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)|総務省
WCAG 2.2の具体的な項目と達成基準
次に、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2を参考に、JISの具体的な項目と達成基準について詳しく解説します。なお、JIS X 8341-3:2016はWCAG 2.0をベースに作成されているため、WCAG 2.2とは多少内容が異なるため注意が必要です。なお、JIS X 8341-3:2016に存在しない項目は、赤字で評価しています。
知覚可能
知覚可能における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
1.1 | テキストの代替案 | ー |
1.1.1 | テキスト以外のコンテンツ | A |
1.2 | 時間ベースのメディア | ー |
1.2.1 | 音声のみ、動画のみ(録音済み) | A |
1.2.2 | キャプション(録音済み) | A |
1.2.3 | オーディオガイドまたは代替メディア(録音済み) | A |
1.2.4 | キャプション(ライブ) | AA |
1.2.5 | オーディオガイド(録音済み) | AA |
1.2.6 | 手話(録音済み) | AAA |
1.2.7 | 拡張オーディオ説明(録音済み) | AAA |
1.2.8 | メディアオルタナティブ(録音済み) | AAA |
1.2.9 | オーディオのみ(Live) | AAA |
1.3 | 適応 | ー |
1.3.1 | 情報とリレーションシップ | A |
1.3.2 | 意味のあるシーケンス | A |
1.3.3 | 感覚特性 | A |
1.3.4 | オリエンテーション | AA |
1.3.5 | 入力目的の特定 | AA |
1.3.6 | 目的の特定 | AAA |
1.4 | 区別できる | ー |
1.4.1 | 色の使用 | A |
1.4.2 | オーディオコントロール | A |
1.4.3 | コントラスト(最小) | AA |
1.4.4 | テキストのサイズ変更 | AA |
1.4.5 | テキストの画像 | AA |
1.4.6 | コントラスト(強化) | AAA |
1.4.7 | バックグラウンドオーディオが低い、またはバックグラウンドオーディオがない | AAA |
1.4.8 | ビジュアルプレゼンテーション | AAA |
1.4.9 | テキストの画像(例外なし) | AAA |
1.4.10 | リフロー | AA |
1.4.11 | テキスト以外のコントラスト | AA |
1.4.12 | テキスト間隔 | AA |
1.4.12 | ホバーまたはフォーカスのコンテンツ | AA |
引用:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2|W3C
操作可能
操作可能における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
2.1 | キーボードでアクセス可能 | ー |
2.1.1 | キーボード | A |
2.1.2 | キーボードトラップなし | A |
2.1.3 | キーボード(例外なし) | AAA |
2.1.4 | キャラクターキーショートカット | A |
2.2 | 十分な時間 | ー |
2.2.1 | タイミング調整可能 | A |
2.2.2 | 一時停止、停止、非表示 | A |
2.2.3 | タイミングなし | AAA |
2.2.4 | 中断 | AAA |
2.2.5 | 再認証 | AAA |
2.2.6 | タイムアウト | AAA |
2.3 | 発作と身体反応 | ー |
2.3.1 | 3回の点滅またはしきい値以下 | A |
2.3.2 | 3回のフラッシュ | AAA |
2.3.3 | インタラクションからのアニメーション | AAA |
2.4 | 可航 | ー |
2.4.1 | バイパスブロック | A |
2.4.2 | ページタイトル | A |
2.4.3 | フォーカスの順序 | A |
2.4.4 | リンクの目的(コンテキスト内) | A |
2.4.5 | 複数の方法 | AA |
2.4.6 | 見出しとラベル | AA |
2.4.7 | フォーカス表示 | AA |
2.4.8 | 場所 | AAA |
2.4.9 | リンクの目的(リンクだけ) | AAA |
2.4.10 | セクションの見出し | AAA |
2.4.11 | フォーカスが隠されていない(最小) | AA |
2.4.12 | フォーカスが不明瞭でない(強化) | AAA |
2.4.13 | フォーカスの外観 | AAA |
2.5 | 入力モダリティ | ー |
2.5.1 | ポインター ジェスチャ | A |
2.5.2 | ポインターのキャンセル | A |
2.5.3 | 名前のラベル | A |
2.5.4 | モーションアクチュエーション | A |
2.5.5 | ターゲットサイズ(拡張) | AAA |
2.5.6 | 同時入力メカニズム | AAA |
2.5.7 | ドラッグ動作 | AA |
2.5.8 | ターゲットサイズ(最小) | AA |
引用:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2|W3C
理解可能
理解可能における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
3.1 | 読みやすい | ー |
3.1.1 | ページの言語 | A |
3.1.2 | 部品の言語 | AA |
3.1.3 | 珍しい言葉 | AAA |
3.1.4 | 略語 | AAA |
3.1.5 | リーディングレベル | AAA |
3.1.6 | 発音 | AAA |
3.2 | 予測できる | ー |
3.2.1 | フォーカス | A |
3.2.2 | オンインプット | A |
3.2.3 | 一貫したナビゲーション | AA |
3.2.4 | 一貫した識別 | AA |
3.2.5 | リクエストに応じて変更 | AAA |
3.2.6 | 一貫したヘルプ | A |
3.3 | 入力支援 | ー |
3.3.1 | エラーの識別 | A |
3.3.2 | ラベルまたは指示 | A |
3.3.3 | エラーの提案 | AA |
3.3.4 | エラー防止(法務、財務、データ) | AA |
3.3.5 | ヘルプ | AAA |
3.3.6 | エラー防止(すべて) | AAA |
3.3.7 | 冗長エントリ | A |
3.3.8 | アクセス可能な認証 (最小) | AA |
3.3.9 | アクセシブル認証(拡張) | AAA |
引用:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2|W3C
堅牢
堅牢における具体的な項目と達成基準は以下の通りです。
NO | 項目 | 達成基準 |
4.1 | コンパチ | ー |
4.1.1 | 解析 | 削除予定 |
4.1.2 | 名前、役割、値 | A |
4.1.3 | ステータス メッセージ | AA |
引用:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2|W3C
まとめ
ウェブアクセシビリティの達成基準にはA・AA・AAAの3つがあり、達成基準ごとに以下カテゴリーに分けられた項目が存在します。
- 知覚可能
- 操作可能
- 理解可能
- 堅牢
どの達成基準を選択するかは企業の任意ですが、一般的にAAが推奨されています。まずは、基準ごとになにを求められるかを把握し、自社がどの基準を目指すかを検討すると良いでしょう。